教授挨拶 本道「本立ちて道生ず」

私は、この度、令和7年(2025年)5月1日付で秋田大学医学部胸部外科学講座の第4代教授を拝命しました、今井 一博(いまい かずひろ)と申します。専門は呼吸器外科、ロボット支援下手術を得意としています。

私たちは、胸部3部門の専門外科領域を擁する診療科です。呼吸器外科・食道外科・乳腺甲状腺内分泌外科の診療科連携が可能なMulti-Specialty Surgery Teamであることが強みです。全身を診る臓器横断的な知識、ジェネラルな視点と専門領域で卓越した手技を併せ持つ医師を育成しています。

論語「君子は本(もと)を務む。本立ちて道生ず」とは、基本を大事にしないと進むべき方向は定まらないという意味です。この一節からヒントを得て提案された秋田大学医学部発祥地の俗称“本道(ほんどう)”は、外科学の本質を示しています。外科は、日本を代表する伝統芸能の一つである歌舞伎によく似ています。時代に合わせ発展しながら400年以上続いている歌舞伎ですが、教科書と呼べるような統一的な公式テキストは存在しません。その技術や知識は、長い歴史の中で師匠から弟子へと口伝や実践を通じて伝えられました。「型を会得した人間がするのを型破りと言う。そうでなければ、ただの形無しだ」 2012年に亡くなられた歌舞伎役者の中村勘三郎氏が遺された言葉です。 “本道”つまり基本の大切さを教えることが何より大切であると説いています。

秋田県の人口は現在の89万人から2045年に60万人(38%減)になると予想され、世界の未来を先取りした人口減少と高齢化は深刻な問題です。高齢化率が50%に向かう極めて厳しい状況の中で、地域医療や介護の需要が増える一方、医療従事者の慢性的な人手不足に悩まされ、重要診療科の偏在・若手医師の県外流出も続いています。これらの問題を解決するため、秋田県では、全臓器の外科学講座が一体となり、外科医の育成プログラムを充実させています。

グラスルーツ宣言

これからの教室を支える若い未来世代と一緒に創るのは、自己成長できる最高の学びを提供する二外科です。日本プロサッカーリーグ、Jリーグに倣って、グラスルーツ宣言いたします。直訳すると「草の根、みんなの」という意味です。だれもが、いつでも、どこでも、自身の成長を、身近に心から楽しめる環境を提供し、その質の向上に努めることを誓います。

現役世代と一緒に創るのは、子育てしやすい環境、家族・友人とアフター5を楽しむ余裕です。私は、医師夫婦・共働き家庭であり、家族が支え合って、成長してきました。同じ環境の、若い外科医が増えており、メンターとして、伴走することができると思います。小難しいことは抜きにして、まずは外科人生を愉しんでほしい。結婚・子育て・親の介護など豊富な人生経験を積むことにより、所作に深みが出ます。

先輩世代と一緒に創るのは、Over 65 外科医も、生き生き活躍、輝くワンチームです。「のみ」仕事を普及させたいと思います。手術のみでも、経験を伝えることができます。私の手術技術が、最高であるときは、今でも、先輩が指導してくださっている時です。外来のみでも、観察力や分析力を伝えることができます。研究のみでも、ロマンを伝えることができます。

私たちがひらく、秋田の未来は、全員活躍型の未来です。全ての世代が、生き生き活躍する、ワンチームを作るため、全力を尽くして参ります。